気候変動時代の“暑さ担当責任者”
近年、アメリカの都市で新しい役職が次々と誕生しています。その名も 「チーフ・ヒート・オフィサー(Chief Heat Officer, CHO)」。直訳すれば「暑さ担当責任者」。聞いただけでユニークですが、その役割はとても重要です。
なぜ「暑さ担当」が必要なのか?
都市部ではコンクリートやアスファルトの影響で気温が高くなる「ヒートアイランド現象」が深刻化しています。さらに気候変動の影響で、アメリカ南西部や南部を中心に記録的な熱波が毎年のように発生。
熱中症による死者数は年々増加しており、社会的弱者(高齢者、低所得者層、屋外労働者など)に深刻な被害を与えています。
これまで「暑さ対策」は都市計画、保健、環境、交通などバラバラの部署で進められてきました。しかし、あまりにも問題が大きくなったため、**“暑さだけを専門に担当する責任者”**が必要になったのです。
CHOの主な役割
CHOの仕事は多岐にわたります。
- 市民への意識啓発:熱中症リスクや暑さ対策を伝える
- 脆弱地域の特定:暑さに弱いエリアや住民層を見極め、重点対応
- 都市インフラの改善:クールルーフ(反射性の高い屋根)、街路樹の植樹、緑の屋上などを推進
- クーリングセンターの整備:図書館やコミュニティセンターを避暑の場に活用
- 政策と予算の調整:複数部署を横断し、資金を確保してプロジェクトを実行
アメリカの導入事例
- マイアミ(フロリダ州)
世界初のCHOを2021年に任命。気候レジリエンスと公平性を軸に都市緑化や避暑拠点の整備を進めています。 - フェニックス(アリゾナ州)
熱中症関連死が全米最多の都市。CHOが中心となり、データに基づいた対策や樹木の植栽を推進。 - ロサンゼルス(カリフォルニア州)
2022年にCHOを任命。巨大都市ならではの不平等や健康被害に焦点を当て、インフラと公平性を両立させた施策を展開。 - アリゾナ州(州全体)
2025年には、全米初となる「州レベルのCHO」が登場。地方自治体や先住民族コミュニティを巻き込み、広域的な暑さ対策を進めています。
なぜ今、注目されているのか?
- 命に関わる課題:極端な暑さは「自然災害」の一種として社会的リスクに
- 公平性の問題:低所得地域ほどエアコンや緑地が少なく、被害が集中
- 制度的な新しさ:洪水にFEMAがあるように、暑さにも専任の制度が必要とされている
つまりCHOは、気候危機時代に都市がどう適応していくかを象徴するポジションなのです。
今後の展望
CHOはまだ新しい役職ですが、今後はアメリカの他都市、さらには世界各地にも広がっていく可能性があります。
暑さは「静かな災害(Silent Killer)」とも呼ばれ、目立たないながらも最も人命を奪う気候リスクのひとつ。CHOの登場は、そのリスクを社会全体で認識し、行動するきっかけとなっています。
まとめ
「チーフ・ヒート・オフィサー」は一見ユニークな役職名ですが、実際には人々の命と暮らしを守る重要な存在。アメリカ発のこの動きは、今後日本や他の国にも広がるかもしれません。


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