近年、アメリカでは長年の飲酒文化に大きな変化が起きています。Gallupの最新調査によると、2025年に「アルコールを飲む」と回答した成人はわずか54%。これは1958年以来の低水準であり、過去10年間では初めて60%を大きく下回りました。かつては安定して60〜63%前後だった飲酒率が、2024年に58%、2025年には54%と急落したのです。
健康リスク意識の急上昇
飲酒離れの背景には、健康リスクへの認識の高まりがあります。2025年には成人の53%が「適度な飲酒(1〜2杯/日)でも健康に悪い」と回答し、初めて過半数に達しました。
この数値は2018年の28%からほぼ倍増。特に18〜34歳の若年層では約3分の2が「適度な飲酒も有害」と考え、実際の飲酒率も50%と全体平均より低くなっています。
科学的研究が「適度な飲酒は心臓に良い」という従来の説を否定し、がんや心疾患リスクとの関連を強調する中、政府が飲酒ガイドラインの見直しを検討する動きも出ています。
ソバー文化の広がり
こうした意識の変化は、単なる禁酒ではなく「ソバー文化(Sober Culture)」として広がっています。
Sober(ソバー)とは「しらふの、酔っていない」という意味。ソバー文化は、アルコールを飲まない生活をポジティブに選択し、社交や自己表現の一部として楽しむライフスタイルです。TikTokやInstagramでは #SoberCurious や #DryTok などのハッシュタグが人気を集め、モクテル(ノンアルコールカクテル)のレシピや体験談が拡散されています。
代替飲料市場の拡大
アルコールの代わりに、アメリカ人は多様な飲み物を選んでいます。
- ノンアルコールビール・ワイン・スピリッツ(Athletic Brewing, Seedlipなど)
- モクテル:果汁・ハーブ・スパイスを組み合わせた“お酒風”カクテル
- 機能性ドリンク:コンブチャ、CBD入り飲料、アダプトゲンドリンクなど
- スペシャルティコーヒー・ティー:夜の社交シーンにも登場
- プレミアム炭酸水(LaCroix、Topo Chicoなど)
この分野は近年急成長しており、レストランやバーでも専用メニューが当たり前になりつつあります。
バー業界はどうなっているのか?
意外なことに、バーやクラブの総数は減っていません。2022年時点で全米に67,000以上の施設が存在し、パンデミックからの回復とともに市場規模も拡大中です。
ただし、LGBTQ+に特化した一部業態(例:レズビアンバー)は1980年代の200軒超から2020年には15軒ほどにまで減少。ただ近年は再び30軒台まで回復しています。業界全体としては、ノンアルコールや健康志向メニューを取り入れ、時代に適応しているのが現状です。
今後の展望
アメリカ社会は、アルコールを中心に据えた社交から、「健康を優先しつつも楽しめる」多様な選択肢へとシフトしています。
この変化は飲料業界だけでなく、イベント、観光、レストラン経営、さらには広告やSNS戦略にも影響を与えていくでしょう。


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